須田幸英税理士事務所 事務所通信 平成22年11月号掲載
赤字の繰越は半分まで?!
 2011年度税制改正において法人税率の引き下げが検討されています。
国際競争力をつける等の目的からですが、結果として税収が減ることとなります。その代替財源案の一つとして浮上してきたのが、表題です。

現行税制において青色申告法人は、ある年度が赤字であった場合それを翌期以降7年間繰り越して黒字と相殺できます。

 例えば、ある年度が500万円の赤字で、翌年度が300万円の黒字の場合、この黒字は前年度の赤字と相殺され残りの200万円は翌期以降に繰り越され7年経過した時点で無効となります。

 それが、検討されている案が実施されると、翌年度が300万円の黒字の場合、その半分の150万円は前年度の赤字と相殺されますが、残りの150万円は所得となり納税しなければならなくなります。(赤字の繰越額は350万円となります)
  必死で立ち直ろうとしている企業が、少し利益が出たとたんに納税に直面することとなります。これでは、それでなくとも疲弊している中小企業は更に厳しい状況におかれることとなります。

 法人税率の引き下げは、大企業を念頭に置いた改正ではないかと思います。
それであれば、この代替財源案も上場企業等の大企業に限定されるべきではないでしょうか。
 中小企業にまで及ぶとすれば日本経済は大混乱になるものと予想されます。

 それにしても最近の税制改正は、理にかなっていないものが多いような気がします。「政治とカネ」のような問題ばかりが国会で議論されている昨今ですが、時間の無駄でしかありません。
 政治経済に関わるもっと本質的なところでの議論をして欲しいものです。

 この案が、廃止になること、廃止にならないのであれば大企業に限定されることを願っております。

 


                                                 所長 須田幸英
 事務所通信11月号掲載
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